過去の失敗を話にしてみた。
あれは高校入学したての頃だった。今でもはっきりと覚えている。
何がって?そりゃあ、高校入学後初めての定期考査試験のこと。特に物理基礎。僕は中学理科の物理はそれなりにできると思っていた。だから高校の定期テスト、それも出題範囲が滅茶苦茶狭い物理基礎だったら、勉強なんかしなくても70点、いや80点は取れると確信していた。
それでもって物理基礎の定期テストの日。朝から涼しい顔してクラスに入っていき、勝利を確信したかのような面構えで席に着いた。本当に試験開始のチャイムが鳴るまでは楽勝ゲーだと思っていたのだ。
朝礼を行い、テストが受けられるよう出席番号順に席に着いた。テスト用紙が配られ、みんなの顔がだんだんと真剣な表情になっていく。
キーン・コーン・カーン・コーン
「はじめ!」
教師の合図とともにみんなのプリントをめくる音が教室中にあふれた。
(よっしゃ一発勝ちに行ったるわ!)そんな威勢のいい心の中の僕は数日後に大後悔するとは思ってもみなかったろう。
ペラッ
問題用紙をめくってみた。ん?んんんん?
問題用紙には日本語が書かれているはずだよな?何度も問題文を読み返す。しかし意味が理解できない。そう!まったくもって解き方がわからないのである!
それでも一応中学理科の知識を総動員して何とか埋めた。何とかだ。もしかすると60点は取れるかもしれない。そんな気がした。
数日後、物理の授業。テストが返される日だ。教師は機嫌よくこういった。
「うん!みんなよく勉強できていた。平均点は88点。とてもいい調子だから、この感じで頑張っていこう。」
お、もしかしたら僕も60数点はとれているかもしれないと少し期待した。
テストの返却が始まった。出席番号順に名前が呼ばれていく。あ、い、う、浦田、次が自分だ。来る。判決の時が来る!緊張で胸の鼓動が高まる。
「おし、次!ウルノ!」
ニヤニヤしながら教師が言った。僕は席を立ち、教壇に近づく。そした教師から自分の解答用紙をもらう。
人とは追いつめられると変なことを考え出すのかもしれない。席に着くまでは点数をみないのが自分のモットーだったのだが、ここで見たら何か時空のゆがみで満点になるかもしれない。そんなことを考え出した。
しかし、その誘惑に耐え席に着いた。解答用紙を一思いにめくった。
「7点」
どうやら僕は初回の定期テストから留年の危機にさらされてしまったようだった。